日本鍼灸である経絡治療法
鍼灸という道具を使ってツボに様々なパターンの刺激を与えることで中枢や末梢神経に作用をさせて、ホルモン分泌や自律神経の働きを調整します。また、痛みを緩和する体内物質を分泌させたり、怪我や炎症の修復を助ける作用もあるので、ココロとカラダに効くのです。
東洋医学を語るうえで外すことができないキーワードが、「陰陽五行」。
「自然のリズムに従ったムリのない暮らし」という自然学を説いた 老子※1の考え方が、東洋医学のベースになっています。
陰陽
陰:休息状態
陽:活動状態
五行
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肝:カラダが必要とする場所への血流量を増やす働き
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心:全身をめぐる血液量を調整するポンプの働き
心は精神への働きと深く関係している
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脾:食べ物の消化吸収をして栄養を取り込む働き
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肺:酸素を取り込んで細胞を活性化する働き
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腎:ミネラル濃度と血液pHを調整して細胞を代謝させる働き
私たちのカラダは、環境や感情の変化によって、臓器の働きや血流のバランスを調整しています。
また、天気や気温の気圧の変化といった環境の変化にも、バランス調整をします。
このような自己調整能力(ホメオタシス)※2がきちんと働いている状態を、「陰陽五行が整う」と言うのです。
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※1「無為自然」=すべての物事はルール(道)に従って成り立っているので、無理をすることなくその「道」に従って生きるのが良いという教え。
この考え方が基礎となり、体質にあった暮らしが提案されるようになりました。 -
※2「自己調整能力(ホメオタシス)」=臓器の働きや血液循環、ホルモンバランスなどを一定に保ち、生命維持に最適な環境を維持しようとする働きホメオタスとも言われてます。
鍼灸治療 = 経絡や気血津液を整える
カラダの陰陽五行をちょうど良い状態にしておくために、私たちは「経穴(ツボ)※3」を刺激して、「気・血・津液」の通り道である経絡の通りを良くし「気・血・津液」の循環をコントロールしています。
「経絡」や「気・血・津液」の状態が悪くなると、陰陽五行のバランスが崩れて病気になってしまいます。
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経絡は「気・血・津液」の通り道であるため、常に道が整備されている事が前提である
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気:刺激に対して起きる精神と身体の変化反応のこと
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血:気を活性化するために栄養すること
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津液:気を維持するために滋養すること
人の身体にも個性(体質)があるので、完全に安定をしたバランスを保っていることはありません。
私たちは各々の体質に適したバランスを保つために、「気血津液」と「陰陽五行」のバランスを整えて健康な状態へ導いているのです。
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※3「経穴(つぼ)」=皮膚や筋膜には感覚
を感じる神経があり、そこへ「快・不快」の刺激をすると、関係する臓器の働きをコントロールすることができます。同じ臓器に関係するツボの集まりを「経絡」と呼び、経絡全体でバランスを整える日本式鍼灸術を「経絡治療法」と言います。
日本鍼灸の経絡治療法= 虚すれば母を補う※4(難経本義六十九難)
アトピーとは、ギリシャ語で「奇妙な」という意味です。アトピー性皮膚炎とは、原因がよくわからないけれど皮膚のバリア機能が低下をして、湿疹や炎症を切り返し起こしている状態のことを言います。
原因がよくわからないので、ステロイド剤によって血管収縮をさせて、まずは炎症と痒みを抑える。痒みが収まっている間に、皮膚のバリア機能が回復するのを待つというプロセスで治療を行います。ステロイドで炎症を抑えている間に、肌の修復機能が回復した人は良いのですが…。自律神経が緊張しているために毛細血管が細くなり、酸素や栄養が肌に届かなかったり、細胞がうまく代謝することができなくてターンオーバー不全になっている人は、症状を繰り返すことになるのです。
「虚すれば※4、その母を補う」という古典医書に残された言葉は、「一歩手前の原因から治療しよう」と説いています。
アトピー肌を治すのではなく、気血津液の働きを整えて肌が育つ身体を作るという視点が、「母を補う」というアプローチの一つなのです。
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※4「母を補う」=東洋医学では、病気の原因を改善をすることが治療だと考えています。 例えば風邪に罹る理由は、ウィルスに触れたかどうかよりも、免疫力や基礎体力の低下(虚)によるところが大きいと考えているのです。